相続させる遺言と遺留分

 遺言を残すことなく亡くなれば、遺産は民法が定める割合に従って法定相続人に相続されます。
 それでよいと考える人も多いですが、すべて妻に相続させたいとか親身に世話をしてくれた子にだけ相続させたいといった思いから遺言を残す人もそれなりにいます。

 我々弁護士が遺言書の作成を依頼された場合には、実際上、特定の相続人に「すべての財産を相続させる」という内容の遺言書を作成することが多いという印象です。

 ただ、それで万全かというと必ずしもそうではありません。
 いくら遺言書で「すべての財産を相続させる」ことにしたとしても、遺留分にはかなわないからです。
 遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人が有する最低限度の取り分と考えてよいでしょう。

 私の経験上、「すべての財産を相続させる」との遺言は、20年ほど前から、かなり流行っていたと思います。
  
 当然のことですが、時が経過し、そのような遺言を作成した方々が亡くなるにつれ、「すべての財産を相続させる」という遺言で割を食った相続人からの遺留分の主張が増えてきました。

 「すべての財産を相続させる」遺言と遺留分の主張は、いわばセットのものとして存在しているものです。

 遺留分には期間制限がありますし、近時の相続法の改正により規制が複雑化しています。
 うっかりすると遺留分を主張できない事態にもなりかねませんので、ご自身で最新の書籍で調べるなり信頼できる弁護士に相談するなりして、慎重に対応することをお勧めします。

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