法定相続人の間で遺産分割協議がうまくいかなかった場合,通常は,家庭裁判所に対し,遺産分割調停の申立てを行います。
しかし,遺産分割調停の対象となる遺産は,原則として,➀相続開始時(被相続人の死亡時)に存在し➁分割時にも存在し➂未分割の遺産に限定されるのです。
そうすると,例えば,被相続人の存命中に,誰かが預貯金を引き出してしまってお金のありかが不明の場合には,引出部分は遺産分割の対象とならないのです(➀を欠くから。)。
被相続人の死亡後に誰がが引き出してしまった場合も同様です(➁を欠くから。)。
このような結論は,おそらく多くの方にとって違和感が残るものでしょう。
しかしながら,家庭裁判所の実務では,不正引出しや使途不明金の問題は,一般の民事訴訟等で解決されるべきと考えられているのです。
実際の遺産分割調停では,当事者の合意の下に,上記のような問題も含めて解決が図られることも多いのですが,当事者の合意が得られなければ,原則通り,上記の➀~➂を満たす遺産のみが対象とされてしまします。
遺産分割調停の申立てにあたっては,果たして,そのような問題も含めて解決する旨の合意が成立する見込みがあるか否かを十分に検討する必要があります。
このような検討が不十分であった場合には,遺産分割調停で分割される遺産がごくわずかなかものになってしまうなど予想外の事態となることもありますので要注意です!